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「MIRAGEー鏡面 界」

 幼児は、実体と鏡に写 る象との区別を学習するプロセスに自己と他者を分離し、人間として主体性を獲得していくそれはまた世界と不可分であった時の環から、分裂と統合が乱反射する航海への出発を意味する。電子メディアとシステムの速い展がりは、鏡像段階から意識をたちまち仮象の森へ連れていく。鏡との距離、その効用と拒絶に馴じむ間もまく、ONとOFF、0と1のあいだに流れる時間が脱け落ちた世界で何を捜し、どこへ行こうとするのか?  明かり窓のある部屋の構造をピンホール・カメラ化し外界をリス・フィルムに転写 する大竹敦人。光源を内蔵する鏡にピンホールを開孔し光とイリュージョンの界面 を映し出す大塚聡。映像と実体が交錯するそのひとつの場所に世界に遍在する隙間へのフィティングを試みる前沢知子。ミラージュ(蜃気楼)の境界から、鏡の内へもつづいている表現の糸口を求めて。 鷹見明彦(美術評論家)